青い街 ジョードプル 訪問記 #3
ジョードプルで2日目の朝を迎えた。まだ気温が少し穏やかな午前、メへランガール砦 (Mehrangarh Fort) へ向かった。
メへランガール砦は旧市街地からさらに丘を10分ほどオートリキシャで登った場所にあり、ジョードプルの街が展望できる。「砦」の名前がつくように、ここはかつでジョードプルを外敵から守るための重要な拠点であったわけで、今でもその砦の上部にはかつて使われたと思われる砲台が備え付けてある。
ラジャスタン州のラジャ (Raja) とはマハラジャのラジャであり、王を意味する。そしてラジャスタンとは「王の土地」という意味だそうだ。インドには多くの州が存在するが、その中でラジャスタン、王の土地という名前がつけられたこのラジャスタン州は何だか特別な場所のように感じる。
メへランガール砦には赤い色のレンガのような岩石が使われており、青い空の下、とても力強い。15世紀に建てられたというので、今から500年以上も昔からこの砦が存在することになる。
既に日差しは強くなっているが、砦の中は日陰にさえいればそこまでの暑さは感じない。海外からの観光客だけでなく、国内からも数多くのインド人が観光に訪れている。その観光客からのチップを目当てに、音楽を奏でる人々も。
メへランガール砦の中には、その砦のかつての居住空間を活かした博物館があり、この博物館もまたジョードプルのかつての暮らしのあり方を知る上でとても学びになる。またメへランガール砦では自動音声ガイドの機材をレンタルできるが、ちゃんと日本語音声も入っているのには驚いた。
メへランガール砦を少しずつ登るうちに段々と街の全貌が見え始めた。ブルーシティだ。この眺めが見たくてジョードプルまで来たのだ。
ブルーシティの由来である青い家々だが、かつては僧侶階級の人々がその他の階級の家々と区別するために青く塗ったという話もあれば、害虫対策の効果を持つ塗料を塗ったためという話もある。本当のところははっきりしていないようだ。
理由はどうあれ、その街の姿は本当に美しく、ここラジャスタンの強い日差し、そしてラジャスタンに住む女性たちの色鮮やかな衣装との見事なコントラストを作っているように感じる。ジョードプルに住む若い世代の間では家を青く塗ることも段々と少なくなっていると聞くが、この景観はこの先も長く保っていって欲しいと思う。
ジョードプルを訪れて感じたことは、かつてのインドの荘厳な文化の力強さだ。僕が普段住む商業都市ムンバイには見られない、ムガル帝国の影響が色濃く残る街。もちろん北部インドはジョードプルだけではない。例えばラジャスタン州ジャイプール (Jaipur) や、隣のウッタル・プラデーシュ州アグラにある世界遺産タージ・マハル。こうした遺産の数々は、インドという大国の歴史と底力を感じさせてくれる。