盟友ムンバイへ来たり(エンペラーの会) #9 – ドビー・ガート

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これは「エンペラーの会インド編第8話」からの続きである。

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羅王、ザッキーニ、マッチの珍道中を書いているとなかなか話が進まないのが今回のシリーズの悩みである。ブログを読んでくれているムンバイの複数の友人からも「魅力的な仲間ですね」とのコメントを頂いている。確かに「魅力的」ではあるし、彼らのような仲間がいてとても恵まれていると思う。ただし「会ってみたいです」とは誰も言ってくれないのは、やはり何か問題があるのかもしれない。日本語はオブラートに包んで表現するものだ。

既に9話目だが、今日は土曜日の話だ。つまり木曜日に羅王とザッキーニが到着し、金曜日にマッチが到着し、全員でムンバイを観光する土曜日である。前回の記事に書いたように今日はいくつかのポイントを回ったのだが、個々については詳細は書かない。もしご興味を持たれる方がいれば羅王のブログをご覧頂きたい。「インド5弱の衝撃!8年ぶりに行ったインドの話 その7」によくまとまっている。

 

この日のローカルツアーのハイライトである大規模な洗濯場であるドビー・ガート (Dhobi Ghat) を訪れた。

ドビー・ガートは壁のようなもので囲まれており、誰でも気軽に入れる場所ではない。かといってゲートがあって固く閉じられているわけでもないので、中に入って行くことは可能だ。しかし明らかに部外者である僕たちがずけずけと中に入ってくことは彼らにとっても迷惑であろうしリスクがゼロとも言えないので、僕は近場の関係者に声がけして中を案内してもらった。こういう距離感に対する感覚は異国の地では極めて重要だと思う。

 

実は僕個人としては、ドビー・ガートは既に今年の頭に訪れている。その時は当時シンガポールに住んでいた上田さんのムンバイ訪問に合わせ訪れた。まだ僕もインドに来たばかりであまり慣れない中、上田さんと一緒にドビー・ガートで働き住む人々の様子を見て色々と考えさせられたことを思い出す。その時、「生き方を定められた人々は何を見るのか」という記事を書いた。

今回改めてドビー・ガートを訪れてみて、僕の見方が変わったのかどうか。大きくは変わらない。洗濯場で生まれ働き暮らすという日々を自らの人生として受け入れることは、もしかすると幸せなことかもしれないし、やはり不幸せなのかもしれない。自由を知ってしまった僕からすれば、その世界は極めて不自由であるけれど、一方で、無限の自由性の中で自分の不自由さを嘆く必要もない。人間はある程度不自由に生きる、言うなれば「足るを知る」という方が、幸せなのではないかとも思う。

人類の長い歴史の中で、例えば今の日本人のようにかなりの範囲で自由な生き方を選択できるというのは極めて珍しい時代なのだと思う。果たして僕たちの身体はその自由性を受け入れるだけの容量を備わって生まれてきているのだろうかとも思う。僕も自由でありたいと思う一方で、自由すぎるとかえって迷ってしまうこともある。制約性と創造性は矛盾するものではなく共存するものだと思っている。制約があるからこそ、その制約の中で創造力が働く。

ドビー・ガートを訪れると、不自由からの幸せと自由からの不幸せについて自問自答することになる。答えはもちろんない。おそらくドビー・ガートに住む人に幸せかと答えれば、きっと自分たちの不自由さを嘆くだろう。しかしおそらくドビー・ガートに住む人で自ら命を絶つほどに人生に絶望する人もいないだろうとも思う。

 

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朝からスタートしたローカルツアーも3時をめどに終了し、ホテルへ戻った。ホテルでのお楽しみはクマールの手づくりカレーだ。既にエンペラーの仲間たちには僕がクマールがつくった何度かカレーを食べていることを知っていたし、今回、彼が僕たちのためにカレーを作ってくれることも伝えてあったので、興味津々であった様子だ。

僕もインドでたくさんのカレーを食べてきたけれど、クマールのカレーは美味しいと思っている。スパイシーだが味に深みがあり、とても手が込んでいることが実感できる。このカレーをエンペラーの仲間がどう受け止めるのか僕も楽しみだった。

結果はこの通り。羅王が「このクマールのカレーには、他のカレーにない『友情』、『ホスピタリティ』というスパイスが含まれていた」と書くように、全員がその味を堪能した。クマールも仲間たちが美味しく何度もおかわりをする様子を見て終始笑顔。僕はその様子を見ながら、インドの友人と日本の友人との繋がりが強くなっていくような気がしてうれしかった。

 

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なおこの遅めのランチにはクマールを頼ってムンバイを訪れていたノルウェーの女性も参加していた。なかなか妙齢の女性であったが何度もムンバイを訪れているようだ。どうやら彼女はジブリの「となりのトトロ」を知っているようで、アニメの話題で盛り上がった。コミュ力の高いマッチはこの時、「ノルウェーといえばムーミンも有名ですよね」と激しく訴えたのだが、「それはフィンランドよね」と即座に訂正されていた。とはいえ欧米人が日本と韓国を混合するように、日本人が北欧を混合するのは仕方のないことだろう。もちろんマッチはそれにひるむことなくカレーを食べ続けていた。

 

一日ムンバイを歩きまわりカレーをお腹いっぱいに食べた一同。さすがに昨日から今日までインドの洗礼を受け疲れたようで、夕方以降、しばしの休息タイムとなった。

 

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