盟友ムンバイへ来たり(エンペラーの会) #10 – ザッキーニとマッチ、帰国

これは「エンペラーの会インド編第9話」からの続きである。

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しばしの休息から回復し、今回最後となるエンペラー全員での晩餐へ。初日木曜日の夜、二日目金曜日の昼と夜、そして本日三日目の昼と連続でインド料理を食べている。そこでたまには他のジャンルにしようと提案。あくまでもメンバーのために、という言い方をしていたが、実際には僕がもう限界だった。

彼らにしてみれば本場インドで食べる旨いインド料理とあって、それが連日続いても問題ないかもしれないが、僕はその本場インドで食べるインド料理が既に過去9ヶ月にわたって続いている。旨い不味いの問題ではなく(実際旨いのだが)、インド料理か否かが問われている。したがって強引にインド料理以外の選択肢としてシーフードの美味しい中華があるよという提案を行い、メンバーの賛同を得ることに成功した。

訪れた店は Colaba にある Ling’s Pavilion という中華料理店。雰囲気も落ち着いているし、ロブスターも量り売りで出してくれるなど、エンペラーの会の最後の晩餐としては相応しいであろう。

二日前の木曜日の夜に羅王とザッキーニが到着し、昨日の午後にマッチが到着し、あっという間に時間が過ぎた。僕にとっては久しぶりのエンペラーの会であり、また久しぶりの日本からの来客であり、おおいに楽しい時間を過ごさせてもらった。わざわざ長い時間とお金をかけてここムンバイまで足を運んでくれた羅王、ザッキーニ、マッチには心から感謝している。どうもありがとう。

 

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食事中に撮影した写真である。充実を感じさせる羅王とマッチの笑顔に比べ、明らかに渋い顔のザッキーニ。彼はこの時何を思っていたのか分からない。ムンバイに到着してからの数日間の不甲斐なさを振り返っていたのか、この1時間後に仲間と別れなければいけないことに寂しさを感じていたのか、既に心はインドを離れ日本のことを想っていたのか。しかし何を考えていたにせよ、この数日間の経験が彼に多くの気づきを与えたことは間違いないだろう。

 

Ling’s Pavilion での晩餐を終え、そのままザッキーニを送り出した。Colaba にはたくさんのローカルタクシーが止まっているが、その中からまだ新しく乗り心地の良さそうなクルマ、そして英語が話せそうなドライバーを探し出しザッキーニを乗せた。もっとも英語が話せるドライバーであっても、ザッキーニの場合、何を聞かれても「イエス!」と答えてしまうリスクを感じたので、行き先、経路全てドライバーに伝え、彼を見送った。

帰国間近となった安心感からか、この旅一番の笑顔を見せるザッキーニ。さようならザッキーニ。ありがとうザッキーニ。また日本で会おう。

 

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ザッキーニを見送り、羅王とマッチと僕の3人は Taj Mahal Hotel のバーへ向かった。

さすがにインド慣れしている羅王。この数日間特にミスを冒すことなく安定した成績を残してきた。しかし、ここで彼は日本から持参したお気に入りのキャラメルポップコーンをバーの中で堂々と食べ始め、ウェイターから叱責を受けるという、この旅始まって以来のオウンゴール的なミスをしでかした。

日本でも、エンペラーの会にてディナーが始まる前にあらかじめカツカレーを食べてから参加するなど、一般的なレベルから考えるとグルメ度合いがやや高めな羅王であるが、そのグルメ度合いの高さがここでは裏目に出てしまったようだ。

ところがウェイターの叱責を受けたもののそのグルメ度合いを抑えきれない羅王は、どうやら考え事をするフリをしながら手の中へポップコーンを隠して食べるというテクニックを考案したようで(既に日本で考案済みであったと思われる)、ウェイターの目をごまかしながら相変わらずのグルメぶりを発揮していた。

 

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あまりのグルメぶりに失笑していたマッチと僕であったが、一方でエンペラーとしてはあらゆる事態に対処できることも大変重要である。そこで僕とマッチも彼のテクニックを習得すべく、ポップコーンを手の内側に隠しながら食べるという実地研修を行った。本来であればホテルにて予め練習をしておくべきであったが、こうしていきなりの実戦でも一定レベル以上で対処できることもまたエンペラーとして必要な資質である。

 

バーでポップコーンをむさぼり食うばかりではなく、エンペラーな会話を堪能した我々だが、残念ながらマッチの帰国の時間がやってきた。マッチはこの後、早朝4時台のエミレーツ航空のフライトにて帰国する。来た時と同様、ムンバイから一度西のドバイへ行き、ドバイから再びインド上空を通り日本へ戻るというエンペラーな道程だ。おそらく羅王と僕がホテルでスヤスヤと寝ている頃に彼は僕たちの頭上を通って日本に向かっていたのだろう。

さようならマッチ。ありがとうマッチ。日本とインドとの文化の違いを感じさせない突破力には僕もおおいに学ぶところがあったと思う。また日本で会おう。

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日曜日の朝を迎えた。

今日一日は羅王と二人きりの旅だ。男二人旅というのは久しぶりである。もう随分昔になるが、僕と弟が学生の頃、二人だけで旅ができるのはきっとこれが最後であろうと思いきってイタリアを旅した。今回はそれ以来ではなかろうか。

前夜遅くまで飲んでいたこともあり、9時過ぎに僕たちの活動は開始された。実は今日の行動については事前にちゃんと計画していなかったので、朝起きて今日は何がしたいかと羅王に聞いてみた。彼からのリクエストとしては、もう一度ダラヴィ・スラムを見てみたい。できれば中に入って見てみたい。そしてランチはちゃんとしたインド料理を食べたいということであった(またか!)。

ダラヴィ・スラムに入る。これは僕と羅王の二人きりだけではちょっと難しいかなと思ったのだが、実はムンバイにはスラムツアーなるものが存在する。 “Realty TOURS & TRAVELS” というもので、スラムをよく知る(あるいはスラムに住んでいる)ガイドが数時間をかけて内部を案内してくれるのだ。当日ではあったがこれに参加すべく申し込みを行った。当初なかなか電話が通じず心配したが、昼頃になって確認の電話が取れ羅王との参加が決定した。僕もこのツアーには参加したいと思っていた。今回羅王と参加できるのは良い経験になろう。

また、ちゃんとしたインド料理というリクエストについては、既にインドにいる以上、どこもちゃんとしたインド料理ではある。それでもなおエンペラー的にある程度のクオリティを求めるなら・・・ということで、今日の動き方も踏まえた上で Lower Parel という地区にある Punjab Grill というレストランに決定。Punjab とはインド北部のプンジャブ州のことであり、クマールの生まれ故郷である。

そして、今日一日の移動のためにタクシーを手配。ムンバイの場合、街中で拾えるローカルタクシーに加え、事前予約して一定時間貸しきることのできるタクシーサービスがいくつか存在する。今回は Meru Plus というタクシーサービスを利用した。ドライバーが英語を話せ、エアコン付きのキレイなクルマ(インド基準)を手配してくれるのでなかなか重宝するサービスである。

ということで、我ながら朝の短い時間で効率よく段取りができたことに内心ほくそ笑みながら、羅王と共にホテルを出発し最後の一日が始まった。

 

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