盟友ムンバイへ来たり(エンペラーの会) #7 – Colaba 散策

2014/10/DSF3604.jpg

 

これは「エンペラーの会インド編第6話」からの続きである。

–––––––––

無事にマッチが合流し、エンペラー全員がムンバイに参集した。

時刻は19時を回っており、そろそろディナーの時間になっていた。しかしエレファンタ島の観光を終え遅いランチを食べた羅王とザッキーニはまだそこまで空腹ではないと言う。そこで僕たちは少し Colaba 地区を散策してから、ディナーへ向かうことにした。

 

Colaba 地区はムンバイの南端に位置する繁華街である。多くの観光客がここに宿を取りまた食事そしてショッピングを楽しむ。結果的に観光エリア特有のインド事情が発生する。熱心な商売人たち喜捨を求める物乞いたちがかなりしつこく周りに付きまとってくるのだ。

日本人がインドに行くと、インドを好きになるか嫌いになるかのどちらかに極端に分かれるという話がある。好きになる理由は色々あると思うが、嫌いになる理由の多くが、インド人にしつこく付きまとわれた、騙されたといった類のものではないかと思う。本当は、インドの田舎はもちろんムンバイのような大都市でも観光エリアをちょっと離れると、そうした付きまといや騙し行為はまず見られない。しかし残念ながら日本人が短期間の観光ではそうした場所に行くことはないから、どうしても観光客からの収入や喜捨を生活の糧とする一部のインド人達の姿が極端に映ってしまうのだと思う。そしてここ Colaba もまたそうした極端な場所の一つだ。

Colaba 地区の目抜き通りである Colaba Causeway をちょっと外れた道をエンペラーの皆で歩いていた。やや暗い道だ。そこにやってきたのは幼い2人の少女たち。おそらく姉妹と思われる。彼女たちが4人で固まる僕たちに近づいてきて、喜捨を求めてきた。

僕はインドに来てこうした状況には良くも悪くも慣れてしまっているので、彼女たちが近づいてきてもほとんど無表情にそれを断ってしまう。そして過去にインドを旅していた羅王もまた僕と同じく淡々と彼女たちをやり過ごす。しかし、インドが初めてのザッキーニとマッチはどういった態度を取ればよいのかやや困惑しているようだった。

こうした時、もし喜捨をしたいと思ったらどうすれば良いのか。それについて良心のあるインド人の中で一定のルールがあるようだ。お金はあげないこと。代わりに食べ物をあげること。そして食べ物をあげる時は、それをお金に変えられないようにしてあげること。

お金に変えられないようにするというのは少しわかりづらいかもしれないが、こういうことだ。例えば子供連れの母親に何が欲しいか聞いたらミルクが欲しいと答えたとする。そこで近くの露天ショップに一緒に行き、その母親が欲しがるミルクを聞くと粉ミルクが欲しいと言う。それを買ってその母親に渡すのだが、母親は後になってそれをお店に戻してお金に換金してしまうというのだ。だからもし何か食べ物を買ってあげたら、その場でそれを開封し換金できないようにすることも大切だと聞く。

なぜお金を上げてはいけないのかという部分について僕はあまり分かっていない。倫理的にあまり正しいことではないだろうなとは思う。あるいは本当か嘘か分からないが、物乞いをする彼ら彼女らには元締めのような存在がいて、お金は上納金となってしまうという話も聞いたことがある。本当の理由は分からないけれど、とにかくお金をあげないこと、これは僕がこの話をしたことのあるインド人全員から言われた善なるルールのようだ。

 

2014/10/FXT2445-Edit__X-T1_XF23mmF1.4-R.jpg

 

しばらく歩いて Colaba 地区のマーケットに着いた。ここは地元の人々が普段の生活に必要なあらゆるものを買い求める場所だ。ちゃんと建物として小売店の形になっている場合もあれば、露天の形になっている場合もある。夕方になると食品を買い求める人々で賑わう。すっかり無口になってしまったザッキーニはここマーケットでも涙目の無表情であっただけでなく、心がどこかに半分持っていかれたようにフラフラと歩いていた。インドはその地を訪れる人に色々な影響を与えるのだ。

 

マーケットを散策後、ようやくディナーへ。場所は観光客定番の Leopold Cafe。ローカルっぽさとクオリティとのバランスが絶妙な場所。実はこのレストランは 2008年のムンバイでのテロ事件にて銃撃があった場所。普段住んでいると全くそんな危険は感じないけれど、インドという国は実はテロとも無縁ではない。

羅王とザッキーニはまだ昼食の影響が残っており、僕とマッチとは食べたい料理のボリュームが噛み合わなかったのだが、マッチはここでもスベり技術をいかんなく発揮し、結構な品数の料理をオーダー。「チキンが食べたい、チキンが食べたい」と何度も訴えた挙句に、タンドリーチキン (Tandoori Chicken) とチキンティッカ (Chicken Tikka) というほぼ同じ料理を頼んでしまった。空腹組にとってはおいしいディナーだが、羅王とザッキーニはこのマッチの豪腕っぷりにややご立腹だった様子。ちなみにマッチは今回にかぎらず、レストランに行くたびにチキンをオーダーし続けるのであった。

 

2014/10/FXT2461__X-T1_XF23mmF1.4-R.jpg

 

美味しいディナーの後は全員ホテルに戻り、ホテル屋上にて2次会。羅王が持ってきてくれたヨックモックをつまみに、エンペラーな会話を楽しんだ。昨晩から引き続き、日本語で話せることに歓びを噛み締めた。

 

この日の様子は羅王のブログ「インド5弱の衝撃!8年ぶりに行ったインドの話 その6」にも詳しく書かれている。